レコ発記念巡業「犬神サーカス団の自殺のススメ」(名古屋ell.FITS ALL)

さて、待ちに待った犬神サーカス団のワンマンです。結局、また月に一回名古屋に来てるよ。だって曜日から参加できるのが名古屋しかないんだもん…。
 雨降りのなか、お茶に付き合ってくださっただけでなく、BDプレゼントまで下さった楓さん、ありがとうございました。お互い、体力つけましょう(笑)。
 まずは開演前に、物販でライブDVD-Rを購入しました。ジンさん手造りのスグレモノだ(スクリーミングマッドジョージ氏による特殊メイクを施されたメンバーと、ジョージ氏の記念生写真入り)。ざっと見た客入りは、フィッツの6割くらいだったでしょうか?ジンさんも公式サイトの日記で書いてたように、ダイアモンドホールで陰陽座、ELL(1階)でANTHEM(←楓さんとひっくり返った)という布陣では仕方ないかも。でも、バンド側には申し訳ないながらも、個人的には客数の控えめなライブは大好物なのでほくほくしました。ごめんなさい。ほくほく。
 なので、前のほうの中央心持ち情次さん寄りに陣取り(明兄さんと凶子さんがよく見えるように)、舞台を見ると、そこには卒塔婆や幟が雰囲気いっぱいで楽しかったです。やはり、コンセプトバンドは形から入らないとね(わたしのコンセプトバンド好きは一生治りません)!
 
 一曲目は、「待ちわびた日」、新譜のミニアルバムの表題作で、ミニアルバムのなかでも、正統派犬神ぽい曲だっただけに、これから入ってくれて一気にボルテージが上がりました。音源で聴いてたときは、そのあまりの犬神っぽさに、セルフパロディのように聴こえるくらいだったけど、ライブではまったく気にならなかったです。そのまま「道行き」「命みぢかし恋せよ人類!」ときたところ、響いた「赤猫」のイントロに感激。そもそも、今回のツアーは、五曲入りのミニアルバム(うち二曲はOPSEとして使われる「今夜も呪いの幕が開く」の歌詞変えVer)の発売記念なので、過去の聴きたい曲をいろいろと聴けるのではないかという期待がありました。ほら、音源で犬神漬けになってるこの身としては、あれも聴きたいこれも聴きたいでいっぱいなのですよ。その期待には、「瓶詰めの胎児」ラストの「箱舟」、アンコールでの「あんたは豚だ」(!)などで応えてもらったと思います。もちろん、新参者のわたしは、犬っ子の皆さんにはすでにおなじみかもしれない「ロックンロールファイヤー」「黄泉の国」「皆殺しのララバイ」などでも、ぱたぱたとしっぽを振るくらいに嬉しかったですよ。「黄泉の国」の凶子さんの赤いガウン姿のあでやかさに、DVDを見ながら素直に練習した(ええ、しましたとも)サインの手も止まりました。しかしこの曲は途中のラップ部分も大好きなのです。
 あと、犬神の楽曲を生で聴いて、いくつか実感したことなど。凶子さんの声が、すごく心地良い。もちろん巧いとか声が出ているとかもあるのですが、なにより音源ではどうしてもこぼれてしまうなにかがあるのです。歌声に潜んだ生命力のようなもの。それが河の流れのように滔々と歌声に溶けいって響く。あああ、本当にたまらない。
 それとね、心地良いといえば、わたくし、情次兄さんのギターが超絶に好みであることを発見いたしました。早弾きがどうとかいう問題ではなく、カッコいいとかいう次元ではなく、ただもうこのギターの音が好みで仕方ない。なんで?わたし、ギタリストにいったことは本当に無いよ?いやもちろん情次兄さん個人も非常に好いたらしい殿方でいらっしゃるのですが、あんなに痩せて長身で甘い雰囲気を漂わせてるひと、わたしのストライクゾーンからは外れているに決まってるのに(明兄さんの立場は何処へ…)。自らのしっぽにじゃれてくるくる廻る子犬の如きベースプレイを見せるジンさんもいるというのに、それはともかく、このギターが好き。寸劇部分でいぢめられてへこむ明兄さんを見た瞬間、やはり顔の模様だけではなかった、と確信しつつときめきながらも、このギターが好き。ああもう、どのプレイがどうとか云えたらいいのに。音楽的知識のないこの身としては、ただもう好みだとのたうつしかありませんでした。情次兄さんのギターが好き。(いやもちろん情次兄さん個人もですよ?)
 ところでここは、名古屋なので、GENSUI氏のラジオにも出演したのだけど、今回のツアータイトルはラジオでは云えず、さらにミニアルバムの曲も「小悪魔エレジー」以外はかけられなかった、という凶子さんのMCに笑いつつも深く納得。そうだろうな「まあ、このご時世だしね…(苦笑」)とは凶子さんのコメント。
 途中の寸劇部分では、前半のシリアス展開(シリアス展開云うなわたし)での、凶子さんが、はっとするほど怖かった。「小さい頃、太陽をじっと見ると目に黒い残像が残っちゃうじゃない?あたい、臆病だったから、その残像がいつまでたっても目から消えなかったらどうしようとすごく怖かった…。太陽の残像は消えたわ。でも…消えない残像もあるのよ!」(大体の記憶です)という台詞が怖かった。凶子さんはMCは噛むけど(可愛い)、台詞は噛まない。そのうえで語られる近親姦と子殺しの物語。あの笑い声、生で聴いたらたまらないです。アスファルトに叩きつけられた血まみれの身体というフレーズがたまらなく印象的で、怖くて、終わってしまうのが勿体無かった。前回の形而上のエロスツアーでも、寸劇部分はあったけれど、今回のがずっと好きです。
 さらに後半のコメディ展開(コメディ展開云うなわたし)では、コミカルなメンバーの表情も見ることが出来て楽しかったです。明兄さん可愛い可愛い可愛い。内容的には、かなり笑うひとを選ぶものだったかもしれませんし、わたしも100%楽しいだけとは云えませんでしたが、そこらへんが犬神の犬神たるゆえんかもしれず。実を云うと、そこらへんの臭みのようなものが、わたしが昔から犬神に興味を持ちつつ、実際に真面目に音源を聴くまでにかなりの時間を要した原因なのですが、いまとなってはもう。それを含めて犬神ならば、わたしはそれもまた受け入れましょう、という気持ちに至ってます。惚れた弱みだ(笑)。
 あと、名古屋ということで、凶子さん以外のメンバーはそれぞれ名古屋出身の舘ひろしの物真似を披露。前回のツアーで、明兄さんが最初に披露したのだけど、よりにもよってクールス時代の曲だったので、お客さんに分かりづらいだろう、と今回は、「冷たい太陽」(ジンさん)「泣かないで」(情次さん)を歌いました。しかしわたしの後ろではそれでも「知らなーい」「分かんなーい」というヤングな犬っ子の声が…。それに駄目押しするがごとく、明兄さんが歌ったのは、1988年の曲で「青い山脈」(笑)。「1988年ていうのも分からないんじゃない?」という凶子さんの声に「オレにとっては昨日のようだよ!」と返した明兄さん、最高(笑)。
 また「妄想天国」での「おどるわよう?(はあと)」と、モンキーダンス(なのかあれは)と、まるで子供がいやいやするような手振りで踊る凶子さんは実に可愛かった(笑)。その不器用な感じと、さらにラストの「箱舟」を歌う彼女の頬を伝った雫を見て、なんだかもう、たまらなくなった。
 音源で気に入ったバンドを実際にライブで見たら、単に音源を追体験するだけで終わったという経験は、一度や二度でなく、あります。そういうときはたいてい、悪くはないんだけれど、と再びライブに参加することは滅多にありません。わたしは、犬神がそうなるかなあと少し思っていたのですね。といっても、わたしの犬神の音源偏愛っぷりはいまやもうかなりのものなので、好きな曲を全部ライブで見るまで待ってたら、何十回ライブに通えばいいのか分からないのですが(笑)。それでも、まあいいやと思うかなあと。比べるのはあれですが、あくまでわたしがライブを愛するバンドとして比較するなら、ガーゴイルのような圧倒さと燃焼さではなく、NOIZのような爆発的な楽しさでもない、それ以外の楽しさが見つかるのかなあ、と今回のライブを見ながらずっと考えていたのです。
 で、わたしは、この犬神サーカス団というバンドの不思議な不器用さが、好きだと思ったのですよ。
 不器用さと云って悪ければ、アンバランスさというか、それこそ凶子さんの持つ二面性のような。MCではじけてあげる笑い声と、寸劇部分での狂気じみた笑い声が同居する、その不思議なセンスと世界観が、たまらなく好きだと思ったのです。自分の心のどこかに、パズルのピースがはまるように、かちっと合った感じがしました。すごく心に馴染むように思いました。わたしは、このバンドがもっと見たいです。アンコール、ジャンプするメンバーと共に跳ねながら、そう思いました。 

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