「悪魔の森の音楽会」デーモン閣下・岡本知高(ユープラザうたづ)

 というわけで、1月30日に行われました「悪魔の森の音楽会」に行ってきました。森初体験をしてきました、くさてるです。もちろん、その存在は知っていたのですが、これまでは地元から遠く離れた場所で開催されることが多かったうえに、邦楽維新関連と同じく、オペラ歌手とのコラボと言われても、オペラ分かんないしな……というくらいの感覚だったのです。しかし、それまでは興味がなかった邦楽関係も、初体験だった「義経記」が実に素晴らしかったうえに、今回はこの「悪魔の森」、近県で行われるとあっては見過ごせませんでした。

 で、チケットなんですが、これ、びっくりしましたよ。なんと前売り券は窓口販売のみ。ネットはおろか電話予約もできないので、行きましたとも、宇多津まで。まあ、わたしは電車で行ける距離なのでまだ良かったのですが、これ、県外のひとは無理でしょ。それってどうなのかなあ……と思ったりもしたのですが、それには当日に不思議と納得してしまったのでした。それについては後述いたします。

 宇多津は、特急列車に乗れば、岡山の児島から瀬戸大橋を渡ってすぐの駅です。駅にはセブンイレブンはあってもいわゆるキオスクはない、そんなささやかなローカルエリアのホールで、今回の「音楽会」は行われました。

 会場入りしてまずびっくりしたのは、開場待ちのお客さんの年齢層の高さ。いや、そもそも閣下の客は年齢高いだろっておまえも上げとるわって話なんですが、それ以上。そして、みるからにみなさま、地元のムッシュとマダムばかり。そういえば、倉敷の「義経記」もこんな感じだった。いわゆる見るからに閣下のお客さん風のかたもいらしたのですが、少数派だったように思います。

 で、席についてから開場までのあいだに、ちょっといろいろ考えたんですよね。わたしはそもそも「悪魔の森の音楽祭」に関しては、レポ記事も読まない白紙状態だったので、手元にある会場で配布された、閣下と岡本氏の紹介が記された見開きA3のチラシだけぐらいしか事前知識がなかった。それもまあ、閣下のことはよく知っていますので、そこではじめて岡本氏のプロフィールを拝見しました。

 そしたら、そこで岡本氏が高知県宿毛市生まれ、と知って驚きました。宿毛生まれのソプラニスタ?あり得んじゃろ、とまっさきに思ったのは、わたしが高知生まれだから。高知市内生まれでも音大行くなんてすごい話なのに、宿毛?マジ?……というこの感覚、他県のみなさま、あるいはもっと都会生まれのみなさまからしたらもしかして田舎への偏見のように思われるかもしれない。でも、わたしもその田舎出身なのです。だからこそ、実感として、すごいことだと思いました。しかも、岡本氏、わたしとほぼ同世代だった……あの時代にそれが出来たって、それはすごいよ。

 で、そのときに、ふと周囲を見回して思ったのですね。ここにいらっしゃる地元の皆さんのなかには、地理的な問題で、都会で公演される文化的な催しに参加したくともなかなか難しいことが多いのかもしれない。もちろん、ネットの発明や交通アクセスの進化は、以前に比べればそれをもっと容易にしました。それでもやはり、距離ばかりはいかんともしがたいのは事実です。でも、もし、文化の方から、自分たちのいる場所を訪れたなら? わたしはそれが、この「悪魔の森の音楽会」なのかな、と思ったのです。だからこその窓口販売、地元優先なのかな、と。

 まあ、まだ実際に見る前に、そんなことをあれこれ考えていたのは、事前に取ったチケットが信じられないくらいの良席で、この至近距離で閣下を見ることになるという現実をいまひとつ受け止めきれずにいたせいでもあります。あかん。近い。

 それでも、開演の時間となったわけですが、緞帳の前にまず姿を現したのは、なんと宇多津町長。マジ。しかし、この町長、なんとも朴訥なお人柄が偲ばれる笑顔で、一生懸命に今回の公演が「宝くじの社会貢献広報事業」の一環であることをPRしていかれました。ここの駐車場がこんなにいっぱいになったのは初めて見ました!とにニコニコしてて、キュートだった。

 町長の挨拶も終われば、いよいよ本編です。ここからですが、正直言いまして、岡本氏の楽曲はわたしが曲を知らないものもあり、さらに、閣下と岡本氏の愉快なトークや小ネタは多すぎて、いちいちどこで言ったことなのかなどがすでにあいまいです。曲順もあやしいです。ですので、あくまでざっとした印象でのレポとは言えないふんわり感想くらいに思って頂けると幸いです。

 また、当然のことながら「悪魔の森の音楽会」公演内容の完全なるネタバレです。ですので、今後この公演に参加される可能性があって、ネタバレなんかいやだ、真っ白で観たい!とご希望される方は、閲覧をご遠慮ください。

 個人的な話ですが、わたしは、まさにまったく真っ白な状態でこの公演を見て、結果、それがとても良かった、新鮮な驚きでいっぱいだった、と思った人間ですので、驚きたい方は読まないほうがおすすめです。今回の宇多津公演に参加したかた、あるいは別地方ですでに「悪魔の森」を体験済みで違いを知りたいとか、ネタバレ気にしない派のかた向けです。どうぞよろしくお願いします。

 閣下登場の一曲目は、わたしでも分かるシューベルトの「魔王」でした。ここで告白しますと、閣下の登場立ち位置がちょうどわたしの席の真反対だったので、正気を失わずにすみました。「魔王」は過去のツアーでも聞いたことがありますが、やはり素敵、というか、こういう場所での閣下のオープニングにぴったり。

 ちょうど、わたしの目の前が演奏のN響楽団オーケストラ(弦楽四重奏+ピアノ・キーボード)のみなさんだったのです。そこでちょっと驚いたのが、その演奏の実に軽やかで耳障りの良かったこと。教養の無さが出てしまって恐縮なんですが、ほら、よく、マンガや映画で貴族の舞踏会とかサロンで、弦楽四重奏の演奏が流れてる、みたいな場面あるじゃないですか。あれって、ぶっちゃけうるさくないのかなとか思わないでもなかったんですが、今夜、本物の演奏を聞いて分かりました。ぜんぜんうるさくない。むしろ、耳に心地よくて、いつまでもいつまでも聴いていられる。すごいな、と思いました。閣下はわたしに本物と出会う機会を与えてくれるな……。

 と思ったら、本物中のホンモノが登場しました。岡本知高氏です。こういうの見たことある、宝塚か美輪明宏だ、みたいな華やかな衣装を身にまとい、歌い始めたその声は。

 そもそも、わたしは声楽とかオペラとかはまったくの範疇外で、興味もないというか、まあ、言ってしまえば「分からない」人間なんです。だから、いくら岡本氏が天才的なソプラニスタであると言われても、そのすごさは分からない。申し訳ないことながら、やはりこういう音楽を理解するにはそれ相応の勉強や教養が必要だと思う。でも、ただ、この声がすごいということは分かった、そんな感じでした。声の波動が空間を揺らすというか、それもただ声が奇麗とか大きいとかではない、想像もつかないような技量と声帯の力で、音の波形が会場中に広がっていく、そう思いました。岡本氏を中心に、柔らかく、ときに大きくひろがる波を、美しいと思いました。

 そして「森の音楽会」の説明というか、岡本氏演ずるオペラ伯爵のもとに閣下演ずる森の魔王の元から「森の音楽会」への招待状が届くという流れとなります。狂言回し的なとっちーさんが可愛い。しかし、ここだったかな?「例のものをもってこい」という閣下の台詞(ちょっと笑うよね、信者なら)に応じてトランクを開けるとっちーさんが取り出す品物に対しての閣下の物ボケ(ちょっと違う)がもう可愛くて面白くて、楽しくて!

 それもほとんどの品物が宇多津押しで、宇多津の塩キャラメルやイメージキャラクターまでどんどんご当地ネタが出てくるものだから、会場の地元民のみなさまのハートはもうがっちり閣下のもの(笑)。そりゃ閣下は聖ll時代からこういうのほんとうにお上手ですが、そのテクニックにさらに磨きがかかってないですか。地方でやればご当地ネタは受けるのあたりまえ、と思われるかもしれないけれど、それがあんがいそうでもない。付け焼刃は分かるものです。でも、近県のわたしでも、閣下が確実に地元民のツボを押さえてるのは分かりましたよ。マルナカとコスモスだもんなー、わたしの県にもあるわー(笑)。

 ここに限った話ではありませんが、今回のこの公演、閣下がやたらと元気で、仕草やポージングが大仰で、すっごく可愛かったです。仕草ひとつひとつが可愛い。キュート。アメージング。そしてなによりも小ネタがすごく多い。「森」ときけば「おふくろさん……」と森進一の真似で歌うし、赤いスカーフを見れば「真っ赤なスカーフ」を歌いだし、そのままあのヤマトのOPのスキャットまで再現するものだから、わたしの隣にいた50代と思しきムッシュは息を切らして笑い転げておられました。しょうがない、あれは笑うよ……(笑)。

 そして、その閣下とともに語らう岡本氏もすごく可愛かった。閣下と親しく語らいつつも、基本的に閣下へのリスペクトがあるのが言葉の端々で分かるのです。他の場所でも言われてましたが、ご自身もあれだけ歌がうまいというか、プロのソプラニスタであるにも関わらず、閣下に対して「閣下、どうしてそんなに歌が上手いんですか!」と目をキラキラさせる少年のようなところがおありになる。すごく好感を持ちました。閣下宗はそういうのを見つけるのがうまいんだぜ。

 そしておなじ四国ということで、高知出身ということをお話され、しかも会場にはお母様までいらっしゃってるということで、会場を沸かせました。でも、そこで閣下が宿毛と宇多津の位置関係から、「おなじ四国でも近くないよね?」と驚かれてて、そう気づく閣下が素晴らしいなと思いました。岡本氏も力説されてましたが、四国内は四国内での移動が大変なんですよ。いっそすぐに大阪とか岡山に出るほうが楽なくらい。

 このあとが、岡本氏の「AmazingGrace」、閣下の歌劇の曲(?これもシューベルトかな?)、と続いて、二人のデュエット「美女と野獣」の曲だったと思うのですが、いや、この流れは圧巻でしたね。閣下もおっしゃってましたが、今日の閣下の唄のコンディションは絶好。これ、良すぎて頑張り過ぎっちゃってるんじゃないの?と終盤には思ってしまったくらいに、歌声が伸びやかで、かつ技巧の使い方がカッコいい。歌ってて気持ちいいんだろうなー、調子いいんだろうなーというのが伝わってくるのです。

 そんな閣下と、音の波動の魔術師(いまわたしが名付けました)岡本氏のデュエットですよ。わたしはなにを見ているのかと思いましたね。ていうか、この空間はなにかと思いましたね。うたがうまいとかそんな言葉で片付けたくはないものの、もうこのレベルまでいったら、そういうしかないわーという感じでした。感動して泣くとかじゃなくて、ただもう、あきれるような、目の前の二種類の歌声を拝むしかない、そんな感じでした。

 でも、その後にまたふたりの愉快なお喋りなんですよ!(笑)。なんなの、このひとたち、もうすっごく可愛いんですけど!(笑)

 続いては、岡本氏がプッチーニのオペラから「わたしのお父さん」を歌い、閣下が「見上げてごらん夜の星を」を歌いました。

 これが、もう。この「見上げてごらん夜の星を」は本当に良かった……。良かったといえばそれはもうぜんぶ良いだろって話なんですが。このロマンティックで美しく、そして哀しい(わたしは永六輔のこのギリギリのロマンチシズムを愛さずにいられない)歌を、閣下はただ素朴に歌うのでなく、まさに聞かせるための歌として歌ってみせるんですもの。たまらない。閣下はプロだ。

 そして、この歌は今日の会場を埋めるアラフィフ以上のお客様にとっても、それぞれに思い入れがある歌に違いなく、今日、ここでこの歌を歌うことは、お客様に対するなによりの贈り物ともなったのではないでしょうか。ぶっちゃけ、デーモンって言っても相撲の解説くらいしか知らない、あ、でも「うたコン」は観たことあるから歌は上手いよな、くらいのおとうさんでも、あの「見上げてごらん」は素晴らしかったよ、あれはうまかったよ、とお家に帰ってから奥さんに聞かせることができるような歌だったとわたしは思います。もちろん奥さまが聞いて帰って「デーモンさん、ファンになっちゃったわ!」でもいいのですよ。会場でCDを買って帰ってもいいのよ(閣下みたいなことを言ってしまった)。

 そろそろ記憶があいまいになってきたのですが、このあとですごかったのは、やはり、岡本氏と閣下のデュエット。なんと「愛と青春の旅立ち」の主題歌「Up Where We Belong」と、クイーンの「ボヘミアンラプソディ」です!

 「Up Where We Belong」については、閣下の三大お気に入り映画(「ローマの休日」「冒険者たち」「愛と青春の旅立ち」)のうちのひとつ、というお話だったのですが、そこで閣下が「どの映画もすこし切ない」と言ったら、岡本氏が「あんがいおセンチなところもおありになる」とからかったのがすごく可愛かったです。

 しかし、わたしとしては、この「Up Where We Belong」、個人的に大好きな曲なので、まさかここで閣下が歌うのを聞けるとは……と曲名を聞いただけで昇天状態でした。このドラマティックさと、美しさ、そしてせつなさ、閣下に似合うに決まってるじゃない、と思ってたら、似合うどころじゃなかった。なんかすごいものを見てしまったあとは言葉にならないですよね。ああいう感じになりました。この曲を聞くことが出来て、本当に嬉しかった。閣下ありがとうございます。

 つづく「ボヘミアン・ラプソディ」は、もうこれもなにか説明いります?という感じなので、いちいち感想書く意味があるのだろうかとすら思いますが、岡本氏とのデュエットというのが素晴らしい効果で、本家クイーンの「ボヘミアン」へのリスペクトとオリジナリティを尊重しつつも、単なるカバーではなく、閣下と岡本氏の「ボヘミアン・ラプソディ」になっていると思いましたよ。I see a little silhouetto of a man, Scaramouche,scaramouche ……のあたりから、鳥肌立ったもの。音源のかたちで欲しいものです。

 あと、閣下はオリジナル曲「SOLA」を歌われ、岡本氏はオペラ曲「誰も寝てはならぬ」を歌われたのですが、その前の岡本氏のMCがいろいろと感慨深かった。

 書くのが遅くなりましたが、今回、観客のわれわれは森の動物として岡本氏ならび閣下にはあつかわれています。おれらケモノ。で、岡本氏が、音大を目指していた高校生のころ、田舎の小さな港町(ご自身でそうおっしゃいました)である宿毛で、うるさくないよう、川べりで歌っていたら、異様に野犬が吠え返してきた……というお話をほっこりエピソードとして話されました。ですが、同じ高知出身のわたしとしては、どれだけの覚悟と苦労で、そこから出てきたのだろうか、と思いました。そしてパンフレットに、ライフワークとして全国各地の学校訪問コンサートを何十年も行っているという記述も思い出しました。ああ、そういうかたなのだなと思いました。

 そして、この「悪魔の森」がこういうかたちで各地に文化を運んでいること、閣下はそれにくわえ「邦楽維新」や「義経記」という活動でも、同じように日本全国を、何十年も回っていることも、思い出しました。もちろん、それは地方だけでなく、都会の活動も多いとは思いますが、それでも。わたしはそれを尊いと思いますし、わたしの大好きな閣下のことを、誇りに思いました。もちろん、岡本氏も!

 とかしみじみ思ってたら、あのイントロが流れて、それどころじゃなくなったことを告白します。はい、このあたりで(たしか)「BAD AGAIN~美しき反逆」が来ました。あかん。

 しかし、ここでちょっと脱線しますが、わたし、今回の公演、たいへんに良い席に恵まれたのですが、残念なことに、ちょうど前の席のマダムおふたりのマナーがあまりおよろしくなく、閣下や岡本氏の歌唱中もなにやらおふたりでささやきあう、という感じだったのですね。で、それが目に入るたびにほんとうにイライラして、椅子の背中を蹴り上げてやろうかくらいに思っていたのです(思っただけです)。かといって、大声でもなくあくまでささやきレベルなので、上手い注意の方法も思いつかず、どうしようかな……と迷っていたのです。が。

 すごかったね。この「BAD AGAIN~美しき反逆」のあいだじゅう、このマダムたち、一言もおしゃべりされていませんでした。閣下の歌がねじ伏せたよ、と後ろで見ていたわたしは歓びのタンバリンを叩く勢い(持ってません)。それまでさんざんささやいてたのだから、この曲を聞いて息が止まった信者さんとも思えない。この曲以上の有名曲でも止まらなかったのに。ただ、もう楽曲の力と歌が、マダムたちから言葉を奪ったのだ!閣下カッコいい!

 しかし、それもそうだよ、と思うくらい、この「BAD AGAIN~美しき反逆」は素晴らしかったです。素晴らしいに決まってるだろといわれても、やはりそう言うしかない。信者としてもいろいろと思うところのある曲です。わたし、歌詞が大好きなの……。それに、この曲くらい閣下が技巧を見せつける曲もないので、ただもう酔いしれるというか意識が飛びましたね。閣下大好き。

 で、このあと、もういちど岡本氏とのデュエット「乾杯の歌」があり、本編最後の曲が「Time to Say GoodBye」!待て待て待て! 「Up Where We Belong」に引き続き、閣下はなんでわたしのフェイバリットソングを知ってるの?と悲鳴を上げました。こんな曲好きに決まってる、こんなにカッコ良くて、ドラマティックでせつない曲ないじゃない! それを閣下が、この岡本氏と歌うなんて最高に決まってると思ったら、想像以上に最高オブ最高で、なんかもう語彙が死にました。いろいろと最高だったこの「森の音楽会」だけど、わたしはこの「Time to Say GoodBye」だけでも来てよかったと思うよ……。

 だって、ほんとうに素敵だった。閣下の歌う「Time to Say GoodBye」。これは別れの歌ではなく、二人が新たな場所に旅立つために、いまいる場所にさよならを告げる歌なのですが、それを思い出すと、ほんとうに涙が出た。いま自分のなかにある、些末な悩みや迷いにさよならを告げる、そんなことができるんじゃないかと思ってしまうくらいに、歌の力を感じました。泣いた。

 ここで本篇終了。カーテンコールで再び登場する閣下と岡本氏ですが、ここだったかな?今回の会場はとても雰囲気がよくて、とても良い公演だった、という話で、岡本氏が閣下のことも、さらに良くなりましたね、みたいに言って、なにかありましたか?と問うたのです。すると閣下が心当たりがないでもない、と言ったのです。

 とうぜん、その理由を聞きたい、となるじゃないですか。岡本氏も聞きたがり(しかしそこで閣下がためらっているのを見て「ファンの方ががっかりするようなことなら言わなくても」というあたり、素晴らしいな、と思いました)、ついに閣下は白状。

 一日10杯以上飲んでいたハイボールを飲まなくなって久しいそうです!今日は休肝日二日目だそうです!キャー!(悲鳴)(わたしの)

 年末の健康診断が思いのほか悪かったことがきっかけだそうですが、閣下、それは呑みすぎです、10万57歳です、もう若くありません!と客席で(心の中で)悲鳴を上げたわたくしです。いやもうほんとう、閣下はご自分で納得さえすればご自分を律することは得意な方だと思うので、あまり心配はしませんが、お気を付け下さい……。

 そして、ここで、多度津の有名人や多度津にまつわるもろもろのお話になったのが楽しかったです。香川の力士といえば琴勇輝ですが、ここで閣下が「ちょっといい?」と勢いづいて、琴勇輝のしこ名に「琴」の文字があるのは、琴勇輝が香川出身だから、ではなく、そもそも琴勇輝がいる佐渡ヶ嶽部屋の創始者が香川出身で、自分の力士に琴平山から「琴」を取って、しこ名に「琴」の文字を使う伝統があったから、というお話をされました。自分の好きなものの話をするときの閣下の愛らしさは無限大です。

 そのまま、香川出身の有名人ネタで爆風スランプの「RUNNNER」を歌いだしたのですが、なんとそこから「地上の星」につなぐという驚きの展開に。もちろん、閣下のあのカバーバージョンで、岡本氏とのデュエットです。

 ああ、素晴らしいものを聴いているなあ、と思いました。閣下のソロツアーでも聞いたけれど、言ってしまえば、あのツアーでしか聞けないはずのもので、それをまた聞くことが出来て、ほんとうに嬉しかったです。

 ここですべてが終了しました。ちょうど二時間のステージでしたが、わたしは電車の時間もあったため、とりあえずダッシュで会場を脱出。ご挨拶もできなかった方、申し訳ありませんでした。なんとかかけこんだ電車も、そのあと何回も乗り換えがあって、なかなか落ち着くことが出来なかったのですが、あたまのなかはただもう、ふわっとした幸福感があって、本当に、楽しくて、良くて、閣下は最高だったなあとそればかり思いました。

 もちろん、それは閣下の歌やステージング、達者なお喋り、愛らしい仕草、存在そのものがマーベラスなことだけが理由ではありません。「悪魔の森の音楽会」という場そのもの(もちろん岡本氏の存在含め!)の、閣下にとっての価値というか、意味合いみたいなものも同時に感じたのです。

 この感想の冒頭に、地理的な問題で、都会で公演される文化的な催しに参加したくともなかなか難しいかたのところに文化がやってきたのなら、ということを書きましたが、まさにこの公演の最中に、閣下がさらっと「この森は移動式なんだ」とおっしゃったので驚きました。でも、そういうことですよね。閣下はまさに、こういう公演を通じて、訪れる人々を楽しませてらっしゃる。もちろん、それはテレビでも同じことかもしれませんが、やはりライブ、生の重みはぜんぜん違う。そして、こういう場所での閣下のお客様への誠実さ(私はあのサービス精神を、誠実さとしか表現できない)は、めぐりめぐって、閣下ご自身への草の根の支持や好感度につながってるのではないかな、と思ったのです。考えすぎでしょうか?でも、そう思うくらいに、この「悪魔の森の音楽会」は素晴らしかった。閣下のコアなファンはもちろん、それ以外の人々の元にも確実に届く内容だったと思います。

 長々と書きました。読んで下さったかた、ほんとうにありがとうございます。正直、知ってる曲ばかりというわけでもなく、岡本氏の分野に関しては無知蒙昧もいいところなので、感想もそんなに書くことはないかな、閣下最高で終わらせていいかな、と思ってたんですが、書き出したらこんな感じでした。もう駄目だ。語彙が足りない。

 というわけで、つまりは、「悪魔の森の音楽会」、素晴らしかったです。わたしは聖ll信者で閣下宗が出発点ということもあって、ソロツアーはともかく、閣下のこういう活動にはなかなか触手が伸びなかったのですが、もはやそれを後悔する勢いです。どこが良かったかは、これまでに書いた通りなんですが、やっぱり閣下の表現者としての才能をとことん体感できたことかな……。

 もっとも、これだけの長文を書いたり、大げさな言い方をせずとも、大好きな曲を、大好きな閣下が歌ってくれた、それだけの単純な話かもしれません。でも、わたしはその単純さが身に染みるほどに、嬉しいのです。閣下はわたしを幸せにしてくれます。ありがとうございます、閣下。これまでも大好きでした。これからも大好きです!

追伸)Twitter経由でたくさんのかたにご紹介して頂きました。読んで下さって拍手やお言葉をくださったかた、みなさまに感謝します。ありがとうございました!

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