「黒密典」GARGOYLE(岡山ペパーランド)

 さて、今日は岡山ペパーランドにて、GARGOYLEです。
開場ぎりぎりに着いたけれど、その時点でお客さんはざっと40人ほど。いつもの岡山ガーゴイルですね。でも、日曜のわりには少ないかなーと思ったり。

 さて、そもそも今回のツアーのもとであるアルバム「黒密典」の感想がまだだった。素直に絶賛、いまや大のお気に入りである「龍風」、地味に面白がれた「刀」と違い、なんだかとても曲者な感じがするアルバムです。聞いても聞いても違う味がにじみ出てくるようで、うまく感想がまとめられないままでした。正直、初聴の印象は「バトルみたい」。ぱっと聴きにはそうメロディアスでない。けれど、よくよく聴けば、ちゃんと存在しているメロディラインが陰になって凝った構成を支えているような、印象としてそういう楽曲が多かった。なのに、結果としてポップな感じもあったりするのがまた面白い。決め曲にはならなくとも、「この一曲のためにこのライブに来た!」と言い切るお客さんが存在しそうな、癖のある楽曲たち。でも、GARGOYLEであることは変わらない。これだけ長いことやってるのに、自己の再生産のループに陥らないGARGOYLEは本当に面白いと思った。そういう曲が中心なだけに、ライブで聴いてみないと最終的な評価は出来ないのかもしれないとも思いますが、まずは音源をしっかり聞き込んでおきました。GARGOYLEはライブで聴いてなんぼ、という考えにも、わたしは賛成ですが、でも音源も立派なGARGOYLEの作品なんだから、それだけで判断するのも別に間違いじゃないよとも思います。ライブは生き物なだけに。

 今回は「黒密典」の曲を全部やる、ということだったのですが、一曲目がそれこそ「enigma」。お好きな人にはたまらないタイプの曲で、ひとによってはこれこそが「黒密典」と太鼓判を押すんじゃないかな。もちろんわたしも大好きです。「ようこそソドムへ」の歌詞に痺れたわたしはしょせんそういう人間なのですが、いいじゃないですか、このカッコつけが!そして、この曲で、ギターソロの前に、真っ赤なマントをひるがえしゆくぞぼくらのKIBA姫が。いやその。今回のKIBAの衣装は、懐かしい感じでチャイナでごてごてで、ものすごく好みなのですが、そのきらきらしい感じが、「enigma」という曲にすごく似合う感じがした。マントですよマント。黒と金に染め分けた御髪も、肩のあたりまで伸びてきて、とてもいい感じです。

 しかし「黒密典」の曲は、どれも意外なほどライブに映えて、楽しかった。「ゼロブラッド」があんなに可愛いと思わなかったし、タイトルを最初に聞いたときには驚いた「ぶっちぎりクラッシュ!」も、躍動感があって、実に良かった。個人的には「黒密典」というアルバムを一曲で紹介するのならこれを選びたい、実に印象的で不思議な音、でもたまらなくカッコいい「Psychological treatment 」が、ライブで聴くと、こんなにアガるとは。全身が浮きそうなアガりかた。音の響きが生理的に脳神経に作用するんじゃないか、あれ。

 またGARGOYLEの歌詞といえば、どれをとっても座右の銘にしたい印象的なフレーズが多いということは周知の事実だと思いますが、わたしとしては「マグマキッド」の「軽蔑するものは敵にも選ぶな」という一言がベスト。この矜持。予想通りに可愛らしく楽しかった「ガラポン」の「まじめに遊ぶんだ/まじめにふざける/まじめに適当を極める」もいいのですが、なんというか、これはもうすでにずっと似たようなことを実践している気もする。あー、だからGARGOYLEが好きなんだな、わたし。

 「黒密典」以外の曲は、結果として少なかったのですが、わたしとしては何年ぶりか分からない「懊悩の獄」が。「懊悩」が(昇天)。手振りがよどみなかった本能万歳。また、「龍風」から選ばれたのが、二曲ともわたしの大好きな「人間の条件」と「楽園に死す」だったので、も一回昇天。好き好き大好き。「楽園に死す」は、ひとつのライブ中で、あと3回やっても問題ないです(わたしは)。疾走感とせつなさが混ざり合ったあの感じ。たまらない。

 MCも楽しかったです。今日はどのメンバーも良くしゃべって、また一人のしゃべりに他のメンバーも遠慮なく突っ込んで重なる感じで、面白かったなあ。今日のライブは記念すべき1001本目。つい先週チッタという大きなところで100本目の記念ライブをやったあとが、ツアーのなかでも一番小さなここというこの落差がいいねという話になりました。TOSHIくんによると、岡山では、もうずっとペパーランドでしか演奏したことがない(イベントは別)。名古屋なんかあんなに転々としてるのに…(アポロシアターでやったこともあるんだよな。それ行きたかった)と、「こうなったらもうずっとここでやる!どんなに客が増えてもここ!300人でもここでする」ってその300人という数字の微妙さが素敵。「そのかわり、入りきらんから、6回回しな。ジャニーズ方式で、三回目からは口パクや」ひどい(笑)。なんかそんな感じで、TOSHIくんが面白かったです。「岡山愛してるよ」と云ったあと「まあ二日後には神戸愛してるっていうてるけどな」と落とすあたりがさすが。「浮気性やから…(ブーイングを受けて)そんなオレが好きなくせに(笑)」ってもうあなたどれだけTOSHIくん。そして、それを受けて「岡山愛してるよ」と云ったとたんに、会場全体の爆笑を受けてしまうKATSUJIも可愛い。

 そういえば、44歳になるKIBA姫は、みなにおめでとうと言われて愛想を振りまいてました。実に愛らしいのですが、その勢いで、投げキッスまでされました。ちっす姫がちっす。わたしが激しく動揺。
 アンコールのMCでは、三日後の広島のチケットがやばいらしいという話に。GARGOYLEの最低観客動員記録は、高知ワンマンで38人という未だに破られていない「燦然と輝く」(TOSHIくん曰く)記録があるらしいのですが、三日後にライブを控えて、現在はその半数も売れてないという話。むしろ行きたくなりますよね。「だからKENTAROくん貸切りや」と言われて「なんでぼく?」と困るKENTAROに、KIBAも困って「その…カッコいいから」っていうのが地味に面白かった。あ、「みんな来てくれ。KENTAROの衣装も隠しておくし」っていうTOSHIくんも面白かったけど。ヌーディストギタリストが見られるかもしれないらしい。「なんで広島あかんのかなあ」「若者おらんのかな」って行ったTOSHIくんへの、GARGOYLEのお客さんは若くないっていうツッコミはわたしがその場で心の中でつぶやいたからみなさんもういいですよ。そのまま「単車乗って忙しいんかな」「ぴったりの曲あんのになあ」とぼやき続けるKIBAとTOSHIが面白い。記録塗り替えかなあ…というそんな年寄り二人(あ)に「記録塗り替えたら、ぼくらもう広島行けなくなってしまう。そんなの、ねえ…」と真面目にコメントするKENTAROは、なんというか、苦労を知ってるな。

 そんな楽しいおしゃべりタイムもはさみつつ、肝心のライブは、やっぱり楽しかったですよ。昔と違ってきたのは、こっちもなのかあっちもなのか分かりませんが、昔のような酸欠で汗だくだくでつぶされるーとかじゃない、もうちょっと余裕はあるんだけど、でも、声の限りに叫ぶ、こぶしを振り上げる、頭を振るということには変わりが無い。お客さんがライブを愉しんでる感と、もちろんメンバーもというのが伝わってくる、すごく良いライブなのです。GARGOYLEの曲を媒介として広がる、心地よさ。この感覚が、わたしは大好き。三回目のアンコール「CRAZY SADISM 」でTOSHIくんが客席に乱入して、みんなが輪になってそれを囲み「CRAZY SADISM 」と拳を挙げたときの、あの楽しさと激しさ。わたしはGARGOYLEが大好きです。
 
 KIBAもMCで「22年前、GARGOYLEをはじめたのは、なんか楽しそうだったから。ファミレスで二三時間しゃべるのも楽しい。公園で花火するのも楽しい。最初はそんないくつもある楽しいことのひとつでしかなかった。でも、いまでもずっと楽しい。なんか楽しいでいいんじゃないか」ということを云っていましたが、うん、わたしもそう思う。楽しいと思う気持ちは、大人になるにつれて、色んなことに邪魔されていく。いちばんは自分のナチュラルな気持ちよりも他者の目を優先することなんじゃないかと思うんだけど、でも、きっと「なんか楽しい」は、最終的に人生を救ってくれると思います。

 終わったあと、ガーゴイラーの皆さんが興奮さめやらずな感じで、口々にどの曲やった、あの曲で泣きそうになったと言われているのが、なんかわたしまで嬉しくなって良い雰囲気でした。やっぱりライブが終わったあとは、興奮して、いつまでもいつまでもそのライブとバンドの話をしていたい。すごく好きだというその気持ちのほとばしりを斜めにかまえてみせることで無駄に流すことは、もうしたくないと思います。

 そして終演後のがちゃがちゃをなにげなく回すと、一発でTシャツを引いてしまい驚きました。わたし、がちゃがちゃ運だけはなぜか強くて、Tシャツはこれで二枚目、メンバー写真の写るんです、などを当てています。ただし、メンバー写真はすべてKATSUJIという、それで計算あってるのかなって大変に失礼ですね。今回のTシャツはGARGOYLEというバンド名に合わせてのガーゴイル模様で、カッコよくて嬉しいです。
 本当に楽しいライブでした。ありがとうGARGOYLE。これからも大好きです。

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