「淑やかな悪夢ー英米女流怪談集」シンシア・アスキス他(創元推理文庫)



 タイトル通り、英米の女流作家による12編の怪談が収められています。
とにかくこの本に関しては、シャーロット・パーキンズ・ギルマンの「黄色い壁紙」を収録してくれてありがとう、という気持ちでいっぱいです(笑)。その昔、キングの「悪夢の種子」の脚注で紹介されていたのを読んでから、読みたくて仕方なかった作品でした。一読後も、期待は裏切られませんでした。神経が不調になり、夏のあいだを古い邸で過ごすことになった語り手が、一室の壁紙を見て、味わう戸惑い、またそれにより徐々にずれていく彼女の思考が読み手にもたらす居心地の悪さが高まったところで、見事ととしかいいようがない不気味な結末にたどりつくこの物語は、まさに「怖い話」でありました。いかにもな怪談ではまったくないところがまた良いです。わたしの好きなシャーリィ・ジャクスンに似た感じがします。

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