「たけしの死ぬための生き方」ビートたけし(新潮文庫)



 実は、たけちゃんの本はけっこう読んでいます。しかしどれも寝る前にさらっと読む為のもので、さほど読み込むことはなかったのだけど、同じような感覚で手に取ったこの本は、ちょっと深みがありました。94年のバイク事故で瀕死の重傷を負った際の体験を書いたものです。たけちゃんの本は、基本的に自分で書いてないものだという印象があったけど(口述筆記)、これはどうなのかなあ。印象に残ったところを、いくつかご紹介。
 
末期ガンを宣告されたガン患者が、嵐に揺れる一本の雑草を見て感動する、という話があるけれど、人は生まれながらの死刑囚なんだから、誰もが、そういう眼を持てる筈なんだよね」
「退院する時色んな人が「体も戻ってありがとうございました。昔通り働きます」ってお医者さんにお礼を言う。じゃ、病気は何だったんだ。何もねえじゃねえか。自分にどれだけの価値があるんだ。悪い意味でもいい意味でも何か痕跡が残んなきゃ、何の意味もない」
「みんなおいらのことを、悪い人と認めるのが怖いんだろうね。だからテレビの前で、家族に「たけしは、口ではあんなことを言うけど、ほんとはいい人なんだから、おまえ、だまされちゃだめだ。ちゃんと家へ帰るし、新しい家だって建ててるんだから」なんて言っている。そう言わないと、自分たちが危うくなる」

 本という分野では当たり外れの多いひとですが(出版点数も多い)、小林信彦の評したとおり、このひとの「文化的なニセモノ、うさん臭さを嗅ぎつける彼の能力、本能は、ちょっと、類がない」です。なにをもって評価、判断していいか分からないくらいに多才でもあるし、様々な見方が出来る個性ですが、やっぱり偉大なひとだとわたしは思っています。

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