8月の読書まとめ(2)

キスの代償 (ブルー・ボウ・シリーズ)キスの代償 (ブルー・ボウ・シリーズ)感想
ミステリ系の短篇小説アンソロジー。一作目の「キスの代償」が、シンプルながら、最後でうわっという気持ちにさせられる読み心地で、そのまま読み進めました。エロティックなものから奇妙な味系までバラエティある内容で、珍しい作品ばかりが収録されているようですが、作品や作家に関する情報が皆無な解説なのが残念でした。
読了日:8月10日 著者:ダニエルコー,中田耕治
わたしの舞台は舞台裏 大衆演劇裏方日記 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)わたしの舞台は舞台裏 大衆演劇裏方日記 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)感想
大衆演劇の裏方として一人で働く女性のコミックエッセイ。宣伝やポスターなどで目にする事はあっても、実際に見たことはないものだけに、その内情がうかがい知れる内容はとても面白かったです。地味な絵柄とゆったりしたテンポのマンガだけど、それが裏方という仕事を表現するのに合ってる感じもします。
読了日:8月6日 著者:木丸みさき
江戸マンガ 2 人魚なめ: 妖怪大集合江戸マンガ 2 人魚なめ: 妖怪大集合感想
「人魚なめ」ってつまりは「人魚舐め」。江戸の黄表紙を現代人に読みやすいようさまざまに工夫を加えて再構成したもの。分かりにくいかな…と思ったけれど、読み始めたらとても面白く、同時に江戸時代の風俗や人々の生活の様子、現代人と変わらないところなども感じることが出来て、とても楽しい一冊だった。とくに「色地獄」の吉原解説がすごくリアルで具体的で面白いです。
読了日:8月6日 著者:
ミルクの歴史 (「食」の図書館)ミルクの歴史 (「食」の図書館)感想
動物のミルクの歴史についての本。人間が飲んできた様々な動物のミルクとその扱われ方の変遷が記されていますが、なにより牛乳が不潔極まりない生乳から安心して飲める清潔な飲料へと変化していった過程が、そのまま人間の文化の歴史にも絡んでいて興味深かったです。カラー図版とレシピも豊富に掲載されていて(なんとクレオパトラの「乳風呂」の現代版レシピまで)面白かったです。
読了日:8月6日 著者:ハンナ・ヴェルテン
本当は間違っている心理学の話: 50の俗説の正体を暴く本当は間違っている心理学の話: 50の俗説の正体を暴く感想
面白い。一般的になんとなく信じられている心理学の俗説をズバズバ斬った内容。厳しいけれど冷静さを失わず、あくまでエビデンスに基づいた意見のもと、ユーモアを忘れていないのがいい感じ。そして分かるのが、分かりやすくて断定的な考えや昔からなんとなく信じられている一般的な意見に負けない、人間という存在の柔軟さと個性のちからです。人間ってそんなに単純じゃないし、弱い存在でもないんだと感じました。おすすめです。
読了日:8月6日 著者:スコット・O・リリエンフェルド,スティーヴン・ジェイ・リン,ジョン・ラッシオ,バリー・L・バイアースタイン
ミステリマガジン700 【国内篇】 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミステリマガジン700 【国内篇】 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
「ミステリマガジン」の創刊700号を記念したアンソロジー。さすがに粒ぞろいで堪能しました。バラエティに富んで面白いし、昭和から平成の歴史も感じる内容です。私は国内ミステリの良き読者では全く無いのだけど、反省してあれこれ読んでみようと思いました。片岡義男、小泉喜美子、原クY襦・鉧鴇羌箸覆匹虜酩覆・箸・飽・歸・任靴拭・読了日:8月6日 著者:
理系あるある (幻冬舎新書)理系あるある (幻冬舎新書)感想
いわゆる「理系」の人々の特徴や言動の「あるある」な感じとその背景にある科学的論理を解説してくれる本。具体的な事例はもちろんなのだけど、それ以上にそれに沿った理系な事象の解説が分かりやすかったです。こういうネタにありがちな卑屈な自虐感が無くてからっとしたユーモアと「理系」らしい(?)倫理観もところどころに感じられて面白い一冊です。
読了日:8月6日 著者:小谷太郎
古典を読んでみましょう (ちくまプリマー新書)古典を読んでみましょう (ちくまプリマー新書)感想
「たけくらべ」「枕草子」「源氏物語」といった日本の古典文学を通じて、古典の読み解きかたを教えてくれる一冊。古典はなぜ読みにくいのか、そもそも古典とは何なのか、どのように作りあげられたものなのかということを懇切丁寧に解説してくれている。その丁寧さに多少の廻りくどさはあるけれど、そこが橋本治らしいところなので、ファンである私には何の文句もありません。何より、古典ってこんなに自由なんだと感じることが出来た。面白かったです。
読了日:8月6日 著者:橋本治
ジャガイモの歴史 (「食」の図書館)ジャガイモの歴史 (「食」の図書館)感想
誰でも知ってるおなじみの野菜であるジャガイモ。その歴史と文化について、豊富な図版を添えて分かりやすく語った一冊。様々な国でのジャガイモ料理のレシピも多く掲載されていて、興味深く楽しめます。
読了日:8月5日 著者:アンドルー・F.スミス
トマトの味噌汁―食べ物大好きエッセイ (光文社文庫)トマトの味噌汁―食べ物大好きエッセイ (光文社文庫)感想
旬の野菜と思い出の味、外国で出会った料理など、様々な料理と味にまつわる思いをつづった食エッセイ。食通ぶった感じではなく、ごく身近に感じられる食材が多く取り上げられていて読んでいて楽しかったです。
読了日:8月5日 著者:東理夫
スローライフ入門スローライフ入門感想
世界中がスピードに支配されている現在、その現状に疑問を抱いて「もっとゆっくり」「スローに生きること」を様々な分野で実践している人々を取材したもの。ところどころに頷けるところはあるけれど、個人的には代替医療を評価しているあたりは(一方的な賛美ではなく問題点も指摘してはいるけれど)「無理」となった。
読了日:8月5日 著者:カールオノレイ
アメリカの家庭と住宅の文化史: 家事アドバイザーの誕生アメリカの家庭と住宅の文化史: 家事アドバイザーの誕生感想
マーサ・スチュワートに代表される「素敵な暮らし」を推薦する家事アドバイザーの歴史とそれにまつわる住宅や家庭の変化についての歴史書。扱われているのが1830年代から1950年代までなので「その先が知りたい…!」気持ちにさせられてしまうのと、そこまでして家庭生活のファンタジーに浸ってしまう女性の心理に深く触れるものではないのが残念。けれども、住宅作りの好みの変遷やそこにどういう女性が関わリ、役割を果たしてきたのか、という部分がとても面白かったです。
読了日:8月5日 著者:サラ・A.レヴィット
それでも猫は出かけていくそれでも猫は出かけていく感想
障害を持った飼い猫だけでなく、地域猫にも手をかけながら、父と母を看取った吉本隆明氏の長女である著者。私にとっては、なによりも「アスリエル物語」の作者、なのですが、この本もイラストが豊富で、そこが素晴らしいです。繊細かつ可愛らしい描線で描かれる猫たちの柔らかさ、逞しさ、躍動感…!ただ、著者の猫との関わり方は単なる猫好きというよりもう一歩踏み込んだ感がありますので、猫好きなひとでも好き嫌いがあるかもしれません…
読了日:8月5日 著者:ハルノ宵子
あの人の台所道具あの人の台所道具感想
食にまつわるエッセイが好きな人ならば、この7人のうち誰かはきっと置き入りなはず(私の偏愛は森茉莉です)。そんな7人の女性作家が文章で触れたことのある台所道具について、紹介した内容です。写真も多く、読みやすく淡々とした文章ですが、書き手がいまひとつはっきりしない存在なのが謎です。台所道具が導くブックガイド、という紹介文にはなるほど、と思いました。
読了日:8月5日 著者:
路地裏の迷宮踏査 (キイ・ライブラリー)路地裏の迷宮踏査 (キイ・ライブラリー)感想
53人の海外ミステリ作家とその作品にまつわるエピソードなどを紹介する書評コラム集。私は海外ミステリの熱心な読者ではないのだけど、とても面白く読めました。ネタバレは絶対にしないように、それでも作品のツボを興味深く語りながら、一つの作品から枝が伸びるように他の様々な作品や作家への紹介も繋げていく内容が、本好きにはたまりません。ひとつひとつは短く読みやすいので、ぜひ気軽に読んでみて、どんどん読みたい本を増やしていくのが正しい読み方だと思います。ブックガイドはこうあってほしいなあ。おすすめです。
読了日:8月5日 著者:杉江松恋
白暗淵 しろわだ白暗淵 しろわだ感想
短編集。幻想と現実のあいだを揺れるように行ったり来たりしているけれど、立ち位置は少しもぼやけていない。だからこの言葉の行く先はどこなのだろうと思いながら噛み締めるようにして文章を追っていくと、思わぬところで冷水を浴びせかけられたような感覚に陥る。どの一篇を選ぶかといわれると困ってしまうけれど、最後の一文が忘れられない読み心地の「糸遊」が好きです。
読了日:8月5日 著者:古井由吉
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