「真夜中の檻」平井呈一(創元推理文庫)



  かの「吸血鬼ドラキュラ」など、海外怪奇小説を数多く翻訳し、また紹介したことで知られる著者のオリジナル作品とエッセイで構成された一冊です。
 なにぶん明治生まれの著者だけに、オリジナル創作のほうはあまり期待してなかったんですが、大変失礼いたしました。二本とも秀逸なうえに、とりわけ「真夜中の檻」のほうは、このすれっからしのわたくしが、背筋にぞくりとするものを感じただけでなく、もしかしなくてもこれは究極の愛ではないかとラストにいたって深く感じいった次第です。使われている小道具は、どれも古典的なものばかりなのに、新しさを感じました。
 エッセイは主に海外の怪奇作家の紹介が多いのですが、著者が入手したもののまだ手をつけていない作品として、シャーリー・ジャクソンの「たたり(山荘奇談)」があげられていて、大のシャーリーファンのわたしとしては、もし著者がこの名作を実際に読んだならどう感じたかをものすごく知りたく思いました。

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