「ブリジット・ジョーンズの日記」 ヘレン・フィールディング (ヴィレッジブックス)



いやあ面白かった。あっというまに読んでしまいました。
 例えるならネットサーフィンをしていて、思いもかけずにぶつかった面白い日記サイトの過去ログを一年分さかのぼって読んだようなもの。これ、映画化するとか書いてるけどやめておいたほうがいいと思うな。よっぽどの腕がないと、ただのつまんないお話ですよ。だって、まさにこれはどーってことないOLの日記なんだもん。文章で読むからこそ、その表現力が楽しいに決まっているじゃない。ベストセラーだというのはうなずけます。
 楽しい部分は数多けれど、「あなたもボスニアでなにが起きてるか知らないんでしょう」と「シングルトン!」とか好き。独身女性というのはイギリスであろうとどこであろうとたいして変わらずにいるんでしょうな。しかし、これに共感してなんで他のいわゆるOLエッセイ(そもそも手に取ろうと思いもしない)には共感できないんだろう、わたし。
 やっぱりこの語り口でしょう。また、この日記の書き手たるブリジットのキャラクター。恋愛してる男がいると、その男との駆け引き(つまりはいかに相手を自分に夢中にさせるか、もしくはさせ続けることができるか)しか頭になくって失敗続き。バレンタインやクリスマスに自分に届くカードの数なんて気にしないとしながらも、やっぱり気になって仕方ない。もちろんダイエットは最重要課題でありながらタバコとワインと甘いものがやめられない。これを通俗といってしまえばそれだけだけど、それでもやっぱりブリジットは可愛いキャラクターでありますよ。
 他人の日記を読むのは面白い。それが知識をハンパにひけらかしたりカッコつけた自分語りのためだけのものでなければ余計に。わたしはこうした、ああ考えた、なんてこった思ったとおりになりゃしないじゃない。そんな類のフツーのことを面白い文章で書き連ねた更新が頻繁な日記サイトが好きなあなた、一読の価値があるかもです。
 もちろん、これはノンフィクションの日記ではありません。あらかじめ他人に読ませるために日記のかたちを借りて書いたフィクションなわけで、ストーリーは、はっきり云えばハーレクイン。でも、ハーレクインほど気楽に安心して読めるものもまたない、というわけで。いかがでしょうか。

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