「デビルマン 全5巻」永井豪&ダイナミックプロ(講談社漫画文庫)



 告白します、通読するのは初めてです。かつてのテレビアニメは放映当時生まれてませんでしたので、見ておりません。オリジナルビデオは一巻だけ観たかな?それでも名作の誉れ高きこの一作、ストーリーは全部知っていましたよ。今回、こうやって読み直すとコマの一部に見覚えがあるけれど、おそらくはどこかで評論された際に引用されたのを見て覚えたのでは。
 永井豪に関してはキャリアのある方ですから、色んな作品を読んだ覚えはありつつも、これまでで一番上手いと思ったのは「手天童子」でした。緻密な設定と伏線のすべてがきれいにループしたストーリーに感心した覚えがある。手堅い傑作、という感じで…。それに比較してもこの「デビルマン」は、すごく特殊な作品だな、と思ったの。4巻の解説で山田正紀が述べているように「作品のレベルがまったく桁違いに違う」というのは真実。これ、すごいですよ。確かに、桁が違う。時代ゆえに古さを感じさせる描写もところどころにあるものの(しょうがないけど、美樹ちゃんが出てくるところは辛いですな)この物語のテーマ、デビルマン、シレーヌを代表とする悪魔たちの造形の素晴らしさ、時代的古ささえ越えてしまう、絵というものが持っている情念というかなんというか、見るものを圧倒する根本的なちから、本気で凄いです。こんなものを同時代で読んだひとが、どれだけのショックを受けたかというのは想像するまでもないという感じ。
 もちろん、いままでに色々なひとがすでに語っているこの作品について、わたしがなにも目新しいことを云えるわけもありませんが、わたしがこの作品で涙した唯一のシーンは「シレーヌ 血まみれでもきみはうつくしい」であったことは書いておきたいかな。未読のかた、お勧めですよ。

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