「12ヶ月(後編)」おかざき真里(集英社・りぼんマスコットコミックス・クッキー)



 まずはメインの「12ヶ月」なのですが、これ自体は恋を知りそめし思春期若人たちの読んでてこっ恥ずかしくなる、しかし確かにリアルなときめきとか戸惑いとかぶっちゃけラブとか、そういうものをこれでもかとばかりに繰り広げる内容なので、ダメなひとはダメかも(そしてハマるひとはハマる)。個人的には女子中学生とか、小学生に読んでほしいなあ。わけわかんないかもしれないけど、どっかひとつのシーンでも台詞でも覚えていてくれたら、将来、自分が実際にこういうシチュエーションに出逢ったときに「ああ、あれはこういう意味だったのか」と実感できるんじゃないかな、と。勿論、すでにそういうものを通り過ぎて久しい年代のお姐さんたちには、眩しくも美しいあの時代の熱を思い出させる一作なのではないかと思います。対象はなんだっていい。でも、あの年代にしか出来ない恋の不器用さとひたむきさってあるのでは。
 だから、作中のお母さんの「ホントはね/世の中に楽しい事はそんなにないかも知れないの」「でもだから余計に/楽しそうに生きることが大事だと思うの」という台詞が身に沁みる年代のひとにもおすすめです。しかしどりみちゃんはぷっくらぽっちゃりの柔らかそうなロングヘアで、本当に良い眼鏡っ娘でしたな。眼福、眼福(最後に云うのがそれか自分)。
 同時収録の「12時間」は、もうちょっと大人向け。失恋してヤケ酒を呑み、出張ホストと出張ホステスを同時に呼んでしまった若い女性。三人はそれぞれの事情をそれぞれに抱えつつ、夜の街を歩いたり泣いたり踊ったり笑ったりする…というそれだけの話ではあるんですが、一晩という限られた時間のなか、そのなかを漂いながら互いに癒し癒され、慰めあう三人の距離感が絶妙です。いや、このホストの兄さんも実に素敵なクロブチ眼鏡で(やはりそれか自分)。夜の散歩、というのはおかざき真里のマンガでは頻繁に出てくるシチュエーションですが、そういう行為でないと見出せないもの、というのが画面上に溢れている構成もすごいなあ。通俗的といえば通俗的かもしれないこんな話で、無数に広がるリボンと草と、巨大な(←ネタバレ)を描くおかざき真里が、わたしは大好きです。

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