「カレンのファスナー」TONO(白泉社・ジェッツコミックス)



 11編の短編が収録されています。明るいコメディ調ファンタジーからシリアスファンタジー、ほんのりBL、奇妙な話にエッセイマンガ、と幅広い内容でファンとしては嬉しい限り。
 「お姫さまははだか」は、童話の「裸の王様」のお姫様バージョンですが、不思議な布を実在させてしまったあたりが巧みだと思います。そしてそれが「心の汚いものには見えないドレス」であって決して「綺麗なドレス」と但し書きしてあったわけではないことも含めて。まあお姫さまのはだかは綺麗だったから良いのです。また「砂の夢の悼み」はうってかわってダークでシリアスなファンタジーです。作者の作品世界に確かに存在している、暗い絶望を見据えたような雰囲気が漂っていますが、読後感は悪くないです。せつない。

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