「グロテスク(上・下)」桐野夏生(文春文庫)



 一気に読み終えました。面白かった。
 東電OL事件が下敷きになっている一冊ですが、あの事件に関心があるかたはまず読んで損はないと思います。もちろん、こちらはあくまでフィクションなのですが、解説にもあるように、ここまで彼女の心性に迫った本はないでしょう。男には分からない、と言い切るのは簡単すぎて嫌なのですが、わたし、この事件のノンフィクションを書いたジャーナリストが自分の本でこの事件に「欲情した」と書いてあったのが嫌で嫌で。素直に「萌えた」って書きゃいいのにね。
 なにが彼女をそうさせたか、ということの元凶である社会に存在する様々な階級を描写しながら、云わずして語る。説教くさくも押し付けがましくもなく、ここに登場する人物らはみな、自然です。わたしは高校生の女の子とかに読んで欲しいなと思います。この世に確かに存在するけれど、誰も語らないことをより深く知るために。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする