「べしゃり暮らし(1)?(3)」森田まさのり(集英社・ジャンプコミックス)



 「ろくでなしブルース」などが有名です。写実的な絵と生き生きしたキャラクターが魅力的なマンガ家さんが、お笑い芸人を目指す高校生を主役にしたと聞いて、コミックスを買いました。前から好きだったんですけど(「ろくでなしぶるーちゅ」とか特に)。でも、このひとの本を購入したのは初めてです。当たりでした。
 一巻あたりでは、まだ「学園の爆笑王」を自認する圭右の笑いのセンスとかがよく分からないし、的確に配置されたキャラクター(悪役、憎まれ役、ヒロイン役、友達など)も、そのらしさがお約束すぎてちょっとなあと思わないでもなかったのですが(だいたい、このあまりにも素直で馬鹿で分かりやすく熱い主人公キャラの性格設定は、その魅力は認めるもののわたしのツボではない)、元芸人だった大阪からの転校生辻本の登場あたりから面白くなってきました。辻本の情けない眉毛がわたしの好みだとかそれだけではなく、やっぱり葛藤あっての物語だということですね。そこらへんから登場キャラクターも幅が出てくるし、お約束だけでは片付けられなくなってくる。なんといってもデジタルきんぎょですよ。デジきんですよ。ロッテンマイヤーズもいいなあ…。
 コンビとか相方という男子同士の特別な関係も、純粋に燃えてて好きです。こういう、女子は入る隙がない空間が存在するのってカッコいい。なに、女子かて男子には入り込めない共犯関係を作るのは得意なのでお互い様だ。恋愛とか友情や打算だけではない、視線だけで分かり合う仲。それ以上に、視線も合わせずに繋がっている関係(デジきんとかデジきんとかデジ)も、良い。
 あと、こういうお話だと、キャラクターが喋るネタも同時に面白くないと物語に説得力がなくなってしまうのですが、わたしは二巻の冒頭「いやーん、校長ーっヘルメット脱ぐ時慎重に!慎重にぃ?っ!」で最初に笑った(笑)。あと、圭右の「しかも白濁とかって何で俺普通に漢字で書けてんだよ!」に不覚にも吹きだしてしまったので、そこらへんは問題ない(笑)。そのネタの面白さが、より説得力をもって物語の展開に力を貸すのは、なんといっても「SHIZU-JUN」の舞台の場面でしょうね。あれは面白かった。そしてせつなかった。
 残念ながら物語は、圭右と辻本が初舞台を踏み、芸人を目指すと心を決める序章段階で、一度、終結してしまうのですが、それはどうやら作者の体力的原因だったようで、今後は、週刊ヤングジャンプの不定期連載枠に移るとのこと。中身的にも、いまのジャンプでは無いと思うし、青年誌がぴったりくると思ったので、よかったと思います。こういう物語は、万全のコンディションで描いてほしい。まだまだなにもかもこれからの芸人志望の男の子たちの姿は、どんどんカッコよく、面白くなっていくと思います。今後が楽しみです。

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