「姉飼」遠藤徹(角川ホラー文庫)



 さぞ、いい声で鳴くんだろうねぇ、君の姉は―。4編の短篇が収録されています。
 淫靡かつ凶悪な暴力の匂いをふりまきつつも、どうにもせつないリリカルな雰囲気をも同時に湛えている作品集。過剰なまでに豊潤なイメージにあふれつつも、あらゆる要素がぎりぎりのところで留まっている。どれかひとつでもこれ以上の余分な色気を見せたら、この絶妙なバランスは下品に崩れてしまうことでしょう。この筆者の書く文章が持つ、圧倒的に迫ってくる質感とイメージの喚起力は、冒頭の「脂祭りの夜」の描写を見ても明らかです。奇妙で残酷で、たまらなく美しい物語が収められています。

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