「世界の広告たち」金子秀之(研究社)



 
 そんなに専門的なところまではいかないのですが、広告にはうっすらとした興味があります。わたしは人間のなにかを刺激することに特化したジャンルが好きらしく、広告はその最たるものといえるからかもしれません。形態も、映像、写真、看板とさまざま。内容も、不特定多数のひとに訴えるもの、ある種のターゲットに狙いを絞ったもの、広告といっても商品を売るのでなく、ある種の思想や考えを表現したもの。そんなふうに、広告の種類は様々だと思いますが、今回手に取ったこの本は、海外の広告の、主にポスターとコピーの組み合わせで表現されているものを選んで構成されています。化粧品から車、イベントなど、扱われている内容は様々で、エロティックなもの、美しいもの、ユーモラスなものまで、カテゴリーで分けられています。カラー写真にシンプルな解説が添えられて、分かりやすいです。
 なんといっても一枚で勝負なものなので、こういう時こそ、ネットならでは、と実際に掲載されている写真をリンクしてご紹介するのが説得力あると思います。が、ちょっと調べたんだけど、これがなかなか見つからない。画像投稿板みたいなところにあるのは引っかかるんだけど、そういうところにいちいちリンクするのもちょっと気が引けるし。なので、これはやはり実物を見ていただくのが一番かもしれません。あと、本というまとまった形式でみることにも意味があると思います。
 個人的に一番印象に残ったのは、イギリスの本やチェーンWaterstone’sの広告。一冊の本が置かれただけのシンプルな形式ですが、その本に記されている題名や表紙の紹介文で、それの意味することが分かります。全部で5冊のシリーズですが、わたしは“Hitler”と記されているものが、いちばん良いと思いました。そこに置かれているのは焼け焦げた一冊の本。そこに記されている名前と、かれらが行ったのは、国民が知識を得るのを止めるための焚書や読書の制限だったということを思いだしました。
アドルフ・ヒトラー、ポルポト、毛沢東。かれらは一つのことについて正しかった。本の持つ力
 日本の広告にも素敵なもの、楽しいものがいっぱいあります。とりわけ、わたしが広告としてというより、広告を創る人々のちからとして印象に残ってるものといえば、以前「広告批評」でやった「反戦」をテーマにしたものですが、ウェブで検索したら紹介しているブログがありました。(URLはこちら)そう、「まず、総理から前線へ」のインパクトはすごかった(誰か非実在青少年ネタでこういうコンペをしてくれないものだろうか)。しかし、海外のそれも、異なる文化や考えに、たった一枚の写真、一文のコピーで触れる事が出来るのです。そういう感覚って素晴らしいなと思います。

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