「上京ものがたり」西原理恵子(小学館)



 西原理恵子の自伝的マンガ。
 絵が好きで貧乏な女の子が、東京でアルバイトしたり駄目な男と暮らしたりしながら、絵の仕事ができるようになっていくおはなし。泣いちゃった。駄目。こんなの生まれたところから離れてひとりで暮らしてお仕事してる女の子(と云えない年齢になった元女の子←自分で云っておきました)に読ませたらアレですよ。いや、こんなことはなく楽しいことばかりですよとかいうひともいるかもしれんが。バイトの種類も、仕事の内容も、重なることは少ないけれど、主役の子のイラ立ちや不安や寂しさは、思い当たることが多くて身につまされて、こっちもいらないことをいっぱい思い出してしまった。辛い。
 でもだから、最後近く、主役の子の仕事がうまくいくようになって「あのころの私のとこにちょっとだけ行って/絶対信じないだろうけどあんたの人生/これからちょっとちょっと楽しいよって教えてあげたい」というくだりが、嬉しくてうなずいた。そうなんだよな。どうなるか分からなくても、不安でしかたなくても、自分でいれば、なんとかなる。誰かに安心だよと言われたり、大丈夫だと言われることがなくても、それは結局、自分でなんとかしなきゃいけないこと。この主役の子も、だらしない男の代りにいい男と出会ったりしたわけではなく、ただ、自分が仕事をして生きていくことができるようになって、幸せになったから。どんどん強くなっていくその姿に、いまだ危うさはあるけれど。
 

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