「フラグメンツ1」 山本直樹 小学館



 連作短編集。この巻には、親に売られて町長の妾をやっている少女の話「雪子さん」の一連の話と、マゾ男性が忘れられない女王さまを捜し求める「夕方のおともだち」の二つのお話が収録されています。なにぶん山本直樹なもので、いわゆる性描写が苦手なかたにはお勧めしません。でも、このひとの作品には、それと突き抜けたような諦観が同居しているのです。それが好きで読んでる。あと、格別に夢を題材にしているわけでなくても、そこはかとなく漂う夢のような現実感の稀薄さも有ります。まさに「宙ぶらりん」の感覚。
 この本で、わたしがうわっと思ったのは「料理屋の息子(後編)」の雪子さんが絶頂に達するシーンとそこで明かされる結論ともいえない物語のおわりでした。怖かった。

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