「未来世界から来た男」フレドリック・ブラウン(創元SF文庫)



 SFと奇妙な味の短編集。ショートショートといってもいい短さのものも多いので、読みやすいです。表題作の「未来世界から来た男」のラストは、衝撃でした。40世紀後より現在の世界へやってきた男を迎えた運命とは…SFなんだけど、こういう最後が待ち受けているとは。いまの時代には書かれないラストだと思いますが、それでもリアルで、皮肉で、辛い。タイムスリップとか宇宙船とかよりも、この視点がSFなんじゃなかろうか。
 しかし全体的には、SFよりも奇妙な味の作品のほうがわたし好みです。泳ぎが得意でない男が、息子が川で溺れているのを見つけたときに取ったとっさの行動が…という「青色の悪夢」はしばらく目覚めが悪くなるような皮肉な話。いやあ家族の絆って素晴らしいですね(棒読み)な「ばあさまの誕生日」、古めかしい雰囲気ながらも、最後の悪夢のような場面が映像的に頭に残る「人形」などが、とくにおすすめです。

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