「レギュレイターズ(上)・(下)」リチャード・バックマン(新潮文庫)



 リチャード・バックマンとは、「ホラーの帝王」スティーブン・キングの別名です。
 オハイオ州の閑静な住宅街で、突然現れたSFアニメや西部劇の登場人物たちが住人たちを次々と虐殺していく、というストーリー自体は「いやまさかそんな」という感じでもあるんですが、これはもう、ストーリーどうこうよりも、こってりと書き込まれた住人たちのキャラクターや描写を読んでいくのが正しい楽しみかただと思います。なんせシンプルなうえに「無茶な」話なので(わたしは、このとんでもない設定で本当にヒトが死んでいるんだということがどうにも納得できないままで、最後の最後で夢落ちになるんじゃないかと思ってました)、二冊分のストーリーがあるかどうかと云われたら疑問ではあるんですが、あっというまに読み進めていってしまうことは確か。キングお得意のピュアなこどもと邪悪な意志のモチーフは相変わらずですが、とても扱いが巧いので、わたしとしてはマイナスではありません。
 イメージの奔流のようなこの作品を読んで思ったこと。なにかと映像的と評されることの多いキングの作品ではありますが、それは文章からイメージを喚起させる能力が高いという意味であり、それは別にそのまま映像化することに向いているということを意味してはいないんじゃないかと思いました。なんつーか、キングって、基本的に悪趣味なので、それをそのまま映像化すると単なるグロになってしまうような気がします。本作も映画化されたら、絶対にR指定でしょう。

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