キノという旅人と、エルメスという名の言葉を話す二輪車を主人公に、旅する彼らが訪れる様々な国の様子を描いた連作短編集です。これまでライトノヴェルにはあまり惹かれなかったわたしけれど、御友達の推薦があって手に取ったところ、とても良かったです。やっぱジャンルでえり好みしてはいけないね。反省。
 とても静謐な文章で、淡々とした語り口ながら、そこに描かれるそれぞれの国の運命は、時に残酷だったり、哀しかったりで、なんとなく星新一を思わせる寓話ばかりです。わたしは「レールの上の三人の男」と「平和な国」の二編がとくに良かったです。どの話が印象に残るか、というのは読む人の数だけあるような、そんな魅力ある連作短編集です。10代の頃に読んだら、より多くのことを学べただろうな。エルメスとキノの語らいはDと左手を連想しました。或いはキットとマイケル(わたしが駄目なのか)。
 様々な物語を客観的に表現しているのは、あくまで旅人としてのキノの立ち位置のせいでもありますが、その立ち位置がときにブレるとき、キノの魅力がより浮かび上がるような気がします。それが毎回でないからこそ、とくに。キノは少年でも少女でも、どちらでも良いのですが、少年だと別方向からの萌えがげほんごほん。少女でも十分に萌えますが。黙れ。
  続刊も購読中。キャラクターがある物語に惹かれるのは久しぶりな気がします。

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