「『エロイカより愛をこめて』の創りかた」青池保子(マガジンハウス)



 かの有名作品の作者が語る製作秘話。と云ってしまったらそれで終わりなんですが(「エロイカより愛をこめて」については作者の公式サイトをぜひ)、「エロイカ」好きなら楽しめること間違いなしの一冊です。かくいうわたしは、連載再開後から、コミックスを追いかけるのがいつのまにか途切れてしまっていたレベルのファンなんですが、これはいけない、と続きを購入する気になってしまいました(笑)。それだけ、キャラクターの成り立ちや製作エピソードが楽しいのです。だってあなた、若き日の「仔熊のミーシャ」と「白クマ」、ミスターLと部長のツーショットだけでも買う価値がありますよ(笑)。
 また「エロイカ」に興味を示したドイツの軍人さんたちが(なんといっても、独軍将校が主役のコミックが日本でベストセラーになってるわけですから)、ネットで画像を検索して、出てきた少佐を見てひとこと「langhhaarig!」と驚いて叫んだエピソードとか(どういう意味かはぜひとも現物を読んで下さいませ)、青池作品に関わる外国との面白い話も読めます。
 さらに、長年一線で少女漫画家を続けてきた青池先生のプロとしての姿勢とこだわりは、やはり興味深いものがありました。職業人としての厳しさがありつつも、それだけにこり固まらない柔和さが印象的でした。なかでもすごいと思ったのは、プロットからシナリオ、ネームから下書き、ペン入れ、背景やトーンワークの流れが再掲載されているんですが、そのネームの落書きのような線が、見事にキャラクターそのものを現してるんですね。いやもうこれは見て頂かないと分からないと思うんですが、線だけを取り上げたら「へのへのもへじ」レベルなんですよ(アタリをつけるためだけのものなのでそれで当然なんですが)、なのに、見事に少佐や伯爵なんです。これがマンガ家さんなんだなと感心しました。

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