「やっぱり今日でした」ヨシタケシンスケ(ソニーマガジンズ)



 どういう本だと説明するのがぴったりなんだろう。イラスト集?一こまマンガ?日常の小さな場面や気づき、誰にでも思い当たるような、でも誰も改めて口にしたことがないようなつぶやきやポーズ、着想が1ページに、多くて5,6個収められています。
 一見は、ノートの端に書かれている落書きのような頼りない線ですが、ぱっと見で、なにがどうなっているかははっきり分かる。さりげないながらも、とても巧みな描線です。
 書かれているつぶやきの多くは、自嘲的で、少し、寂しくなるようなもの。でも、どれもが自分にも思い当たり、なおかつ「そう思ったことあるけど意識しなかったよね?」と念押しされたような錯覚に陥ります。どこから読んでも大丈夫、どこで止めても大丈夫。ケータイの待ちうけなんかにもうってつけなんじゃないかと思います。
 似たような感じのイラストエッセイ本は、巷に溢れていると思いますが、それらのどれとも違うのは、根底にある微妙な非モテ感というか、喪失感。人間と人間のつながりってそんなにしっかりしたものでないよね?と確認しているようなものです。しかしシニカルに終わるのでなくそれでも日常は続いていく。そんな感じ。また、人間のちょっとした仕草、誰も改めて拾い上げたりしない日常的な動きをすくいあげるように描きとめているのも、とても巧いと思いました。

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