「タジリ ザ ジャパニーズ バズソー」TAJIRI(マガジンハウス)



 云わずと知れたWWEで活躍中のタジリ選手、初の書き下ろし単行本です。いまは残念ながら更新が止まってしまっているんですが、本人の公式サイトに掲載されていた日記も面白く、(わたしはチェックできてないんですが)週刊プロレスで連載中のコラムも人気なタジリ選手だけに、本が出るときいてずっと楽しみにしてたのです。自伝なので、WWE関連の話は全体の多くの部分を占めるものではありませんが、それでもタジリさんがWWEにたどりつくに至った経緯、いまのWWEを構成する大きな要素であるECWについての記述などはとても興味深く読めました。ポール・ヘイマンとトミー・ドリーマーがあんなにいい男だったなんて。自伝なので、まだ少年時代のタジリさんの写真とかも掲載されてるんですが、びっくり(笑)。面影ないです。クラスにひとりはいた、線が細くて気の弱そうな、でも格闘技オタクな少年という印象です。
 読んでいて感じたのは、タジリさん自身の確固たるプロ意識、かな。それこそ以前公式サイトの日記でも触れていたけど、ちゃんと稼げないとプロではないという前提があって、それに見合った働きをするためになにをすればいいのか、ということに関して、いつも真摯に向き合ってきたひとなのだなと思いました。良い意味で利己的でビジネスライク。でも、余計なことには頭を使わない感じ。これ、という一線が自分のなかにしっかりあって、それ以外のことには目もくれないんじゃないかな。そして、稼がなくてはプロではないといいつつ、ときに採算をまったく度外視して義理人情のために身体を張る、そんなひと。
 勿論、そんなタジリさんが語るWWEスパスタのエピソードはどれも楽しいものです。WWEがお好きなひとはぜひご自分の目で確認していただきたいけれど、『オカマジョーク好きの三人』という箇所まであります。すみません、わたくし、大喜びしました(…)。この三人が誰かって?ケイン、ビッグショー、ディーボンです(笑)。かれらがどんな素敵なネタをかますかはぜひともご一読を!どれも想像すると文句無しにおかしいんですけど、とりわけ、ケインたんのネタには、わたくし、腰が砕けました(笑)。スパスタのエピソードはそんな感じでどれも楽しくて面白いんですが、全部紹介するわけにもいかないので割愛。ただ、『手のひらサイズのコンピューターゲームが好きなAトレイン』のエピソードには萌え死ぬかと思いました。かーわーいーいー。
 あと、ひとこといってよろしいうか。タジリさん、クリスチャンのことを可愛いって語りすぎです。それもどこがどう可愛いかとか考察までしてます。しっかり。あれも可愛いこれも可愛い。こんなことするのも可愛い。あんなとこも可愛い。そこまで語っておいてシメのひとことが「そんなクリスチャンのかわいらしさ、少しだけわかっていただけたでしょうか?」…ごめんなさい。わたしもクリスチャンのことは十分可愛いと思うけど、たぶんタジリさんがクリスチャンを可愛く思う気持ちの十分の一にも到達できてない気がします…。
 個人的にはミステリオのことがほとんど触れられてないのでプチ寂しいんですが(笑)、しかしWWEにタジリさんがたどりついたいきさつとそのバイタリティだけでも十分に読ませるものがありますし、もちろん、WWEファンには文句無しにおすすめです。WWEという巨大産業(だと思うの)の裏側、スパスタの素顔、読んで損はないと思います。面白かった。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする