「GIRLS’ ROCK ?Tiara?」デーモン小暮閣下



 デーモン小暮閣下、新春恒例の(amazonに書いてた、そうだったんだ)女性ボーカルのカヴァーアルバム集。とうとうこの第三弾で一区切りになるようです。最後を締めくくるのは、70年代から90年代にかけて、オリコンチャート1位を獲得した女性ボーカルの楽曲を中心に選んだものとなりました。いやもうこれが。その。
 傑作。
 
 いやいやいや!くさてるさん閣下に関してはアレだからとか、そういうので判断するのやめて?わたしが閣下の新作を評するわけだから、まったくもって理性的な判断が出来ている自信はないけど、やめて?(お前がやめろ)えー、でもでもでも!これ、間違いなく、聖ll解散後の閣下のソロワークのなかでナンバーワンの出来ですよ。以下、各曲の感想など。
「熱くなれ / 大黒摩季 」
 「HereWeGo!」のシャウトが、まさに幕開け。シングルとは違ったヴァージョンです。またそのアレンジがカッコいい…。疾走感溢れるこの曲が1曲目なのはぴったりだと思います。
「絶体絶命 / 山口百恵 」
 さすがにリアルタイムではないけど、ナツメロとしては好きな一曲です。これもまたアレンジが絶妙。ホーンがすごくカッコいいのです。物語性に溢れた歌詞を歌う閣下に微塵の違和感は無し。
「そばかす / JUDY AND MARY」 
 「あのデーモン小暮閣下があの曲を!」という部分では、たぶん一番の売りの一曲なのだと思います。失礼を承知でいいますが、いやあ、閣下がすごく頑張った!(笑)ちゃんと「そばかす」なのにちゃんと閣下。素晴らしい。見てもいないのに、アニメのるろ剣の絵が浮かぶのはちょっと困ったけど。
「PIECE OF MY WISH / 今井美樹」 
 大変に申し訳ないながら、原曲はぶっちゃけ苦(略)。それも今井美樹嬢のせいというより、思いいれたっぷりにこれをカラオケで歌うタイプの女子とうまくいったためしがないから、なのですが、いやもうこの閣下ヴァージョンはどうしちゃおうかな。全然アレンジ違って、明るくキュートなロックになっているのですが(それが正解)、これ、うっかりライヴでアンコールにかかったりしたら、わたし、泣いちゃうかも。陳腐といっても叱られないであろうこの歌詞が、閣下の歌声とこのアレンジの魔法にかかると、なんかもう、浮かんじゃうのだ。あの白い光りのなかの閣下が。
「フレンズ / レベッカ」 
 これが外れる訳がない。閣下とNOKKOといえば、同時代を生き抜いた戦友。でも、レベッカの持つポップロックなところは、閣下は十分お手の物だと思うのよね。閣下といえばHR/HMであるのは、わたくしも否定しませんが、閣下の本来の音楽指向はもっと幅広いものなんじゃないかしら。勿論、この曲のドラマチックなアレンジが、また閣下により似合って素晴らしいものになっているわけですが。
「地上の星 / 中島みゆき」
 まいった。めっためりやすめりけん粉(これわかるひといるのか)。この曲をカバーするのに、誰がこんなアレンジに出来る?プログレってこういうのをいうんだよね!原曲を破壊するスレスレまでいきつつも、まさに「火の鳥の飛翔のごとく」に再生してみせたこの手腕よ。ライヴで再現可能かどうかは分からないけれど、このドラマチックな展開に胸が震える思いがしました。
「BELIEVE IN LOVE / LINDBERG」 
 え?「BELIEVE IN LOVE」 ってこういう曲だったよね?とリンドバーグファンに素で殴られそうなことを云ってしまいましたが、いやもう。あのキャッチでポップな曲が、ここまで泣ける美しいバラードになって、閣下に歌いあげられるんですもの。こういう曲だったんだと納得せざるをえない。正直云って、原曲は、今井美樹と張るくらい個人的にアレな楽曲だと思うんだけど、ここに至って、ああ、こういう曲だったんだと分かりました。素敵なシスターフッドの曲だったんだね。それを閣下で再確認できた、この素敵な感じ。
「CAT’S EYE / 杏里」 
 そんな企画があるかどうかは存じませぬが、もしアニメをリメイクするときは、主題歌はこれでいいよ(笑)。十分にカッコいいもん。HRテイストもたっぷりと盛り込みつつ、この曲が本来持ち合わせている都会的な雰囲気も落とすことなく再現したアンダースのアレンジに乾杯。
「夢見る少女じゃいられない / 相川七瀬」
 原曲が大好きなだけでなく、閣下のこのカヴァーも素晴らしい。ていうか、こんなんキライなわけあるか(半ギレ)。わたしのなかのガールズロック好きな部分にぴったり合う。この曲に関しては、聴いているとそのまま、原曲の七瀬たんが浮かんだ。あの頃のやせっぽっちで赤い髪を揺らす少女のイメージにぴったり。この曲のPVを作って、当時の七瀬たんの映像を使えば何の問題もないかたいいと思います。そして、ギターソロが印象的だと思ったらやっぱり大橋さんだった。
「私は風?私は嵐 / カルメンマキ&OZ・SHOW-YA」
 SHOW-YAの「私は嵐」(この曲だけはオリコンチャート1位でなく12位)と、日本ロック史に残る名曲といわれるカルメンマキ&OZの「私は風」をメドレーで構成したもの。正直云って、「私は嵐」だけなら、間違いなく良い出来でカッコいい、さすが閣下といわれるカヴァー曲になったことでしょう。そこを「私は風」をミックスしたことにより、単純なカヴァーから外したカッコ良さがかもし出されて、さらなる傑作と化けた結果となりました。素晴らしい。
「DEPARTURES / globe」
 実は、相川七瀬と並んで楽しみだったのが、この曲。ええ、小室メロディには抗えませんよ、好きだもの。小室メロディで閣下に歌ってほしいナンバーワンは、やはり「BEYOND THE TIME ?メビウスの宇宙を越えて?」なわたしですが、この頃の曲も好き。期待に違わぬ閣下の歌声もさることながら、原曲の持つ雰囲気を保ったままで、しかし独特の展開をみせることにより、さらにこの曲の魅力を増してみせたアンダースの手腕に、わたしはもう真剣に、スウェーデンまで、菓子折りをもっていきたい。
 アルバム全体をみた感想としては、一作目のときにはまだ垣間見えたカラオケっぽさがまったくといっていいほどない。アンダースのアレンジが素晴らしいのは間違いないけど、けして、それだけではない。アレンジの持つちから。閣下の歌声のちから。原曲のもつちから。おそらくはそのすべてが相乗効果を呼んで、素晴らしい出来になってます。どの曲を選んでも、閣下とオリジナルの歌手の両方のイメージが浮かぶ。間違いなく、このシリーズのなかで一番の出来です。
 歌詞が生きて場面を創り出し、しかもその感覚が聴いているひとの心に引っかかるフックを作り出す。ガールズロックというのは、そもそも確かにそういうものであったはずです。はっちゃけていたり、みっともなかったり、楽しかったり、せつなかったり、孤独だったりする、ガールズの感じる感覚を曲に変換することにより、人々の共感を得ることが出来る、ある意味、シンプルなジャンル。その意味でも元々が名曲揃いなところに、日本での評価や先入観に左右されないスウェーデン人のアンダース・リドホルムのアレンジが加わり、匿名性というところからかけ離れた存在であるがゆえに、いっそ楽曲のもつちからを際立たせることができるデーモン閣下の歌声がそれを表現する。大橋さんやオラをはじめとするミュージシャンの力も勿論です。すごい。わたしはもう、泣きたいくらい嬉しい。
 これだけの感動を、本当だったら、閣下のオリジナルアルバムで感じるべきだと思う人もいるだろう。しかし、わたしは、閣下がやると決めたことそれすなわち閣下の芯となるべきものであると信ずるので、カヴァーアルバムという選択肢にはもう不満はないです。作品がすべて。心よりそう思います。目の前にあるものがすべて。
 しかし、ここまでの出来だと、当然、ツアーが期待されますが、5月まではミュージカルの予定があります。ということは、夏?ならば、これまでにない熱い夏が待っていることでしょう。わたしはただひたすら、それを待ちます。これらの楽曲が、ライブで、生命を吹き込まれる瞬間を、待ち望みます。

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